教室紹介

篠原教授より

年頭所感

 新年あけましておめでとうございます。
 あれほど猛威を振るったコロナ禍による医療の混乱も昨年内で概ねおちつきを取り戻し、社会・経済活動もコロナ前の状況にもどっております。我々も2023年10月5-7日にロイトン札幌で、全国から約1600名の参加者を集め、対面で日本泌尿器科学会東部総会を成功裏に終えることができました。参加者数、演題数などはコロナ前より多いぐらいでした。
 さて、2024年は「医師の働き方改革」元年になります。これまで、なんとなく許されていたというか見逃されていた医師の過重労働にも大きな制限が加わることになります。教授として、この10年間の北大泌尿器科の状況を振り返ってみても、確かに過重労働に伴うメンタル障害の発生が明らかに増加している印象がありますし、医局を去る医師数も増加しているようにも思われます。もちろん働き方だけがすべての要因とは言えないとは思いますが、改善すべきであることは明らかです。それでは、どのようにすれば、働き方改革を行いつつ、今までの仕事を継続していけるのでしょうか?本当に難しいテーマであり、実は誰も正解といえる答えは持っていないと思います。ただ、少なくともいえることは、我々の仕事に関し、古くからの慣習を見直し、いかに無駄を排除することができるか考えることだと思います。その点で以下に示す、トヨタ自動車株式会社の「7つのムダ」が参考になります。

事技系職場における7つのムダ

 このすべてを省くことは容易なことではないと思いますが、努力すべきと思います。実際我々も医局として無駄な会議の廃止など行ってきていますが、これは全病院単位で行われるべきと思います。次に重要なことは、外来診療を中心とした診療の効率化です。多くの患者さんをみることで外来の負担が非常に大きくなっています。患者さんと接し説明・同意を得る過程(A)自体の効率化は難しいかもしれません。しかし実際の診療では、それ以外に電カルへの記載、オーダリングの手間、ICのためのベース情報の提供など様々な過程(B)があり、一人当たりにかかる外来診療時間が長くなっているように思います。その点でせっかく電子カルテを導入し、多くのIT機器やアプリが開発されてきているならば、それらを積極的に活用することで(B)の時間を短縮化できないかを皆で考える段階に来ているように思います。つまり、今まで一人の患者さんに(A)5分+(B)7分=12分かかっていたならば、(B)を2分短縮し、(A)+(B)=10分にすることで、1時間に見れる患者数が5人から6人へ増加、そして早く仕事を終えることが可能になるかもしれません(ただし、効率化したからといって、外来患者数を増やしたら元の木阿弥であり、増やさない、あるいは逆紹介などで減らす努力は必要ですが)。まだまだいろいろなアイデアはあると思いますが、皆で診療の効率化について考えるべき時に来ています。
 このようなことを考えつつ1月1日を迎えました。昼過ぎまでは、なにもなく静かな正月だな・・と思っていましたが、午後4時過ぎに能登を中心とした北陸地方において巨大地震が起こり、大変な事態となりました。特に冬場の災害であり、また高齢化の著しい地方であり、日本を挙げて援助すべき状況と思っています。また1月2日にはJAL516便と海上保安庁の飛行機が羽田で衝突、大事故となりました。この事故では、JALの機長、CA、乗客の素晴らしい対応で、一人も死者を出すことなく避難できました(非常に残念ですが、海上保安庁の飛行機では6人中5人の方が殉職されております)。この事故の原因はまだ何も明らかでなく、コメントすべきものはありません。ただ避難という観点では、シミュレーショントレーニングの重要性を明らかにしたものと思います。またもう一つ重要なことは、JAL便の機長が、機内をチェックしたうえで、逃げ遅れていた方を避難させ、一番後方のドアから一番最後に脱出されたとことです。これこそ、本当のリーダー(責任者)の対応であると思います。まだ、これから様々なことが明らかになっていくとは思いますが、しっかりした事故調査の実施により、二度と同じ事故が起こらないことを念じています。
 さて、最後になりましたが、私も65歳を迎え、いよいよ本年3月で定年退職となります。あと3か月ですが、頑張っていこうと思っています。これまでの皆様のご厚情に心から感謝しております。

2024年1月6日 篠原信雄

腎泌尿器外科学分野教授に就任して

初代 辻一郎教授にはじまり、小柳知彦教授、 野々村克也教授と歴史をつないできた北海道大学大学院医学研究科 腎泌尿器外科学分野の教授に10月1日就任しました。これまで一緒に腎泌尿器外科学分野をもりたててきた全ての同門の先生、医局員の先生のおかげだと思っています。本当にありがとうございます。

私に与えられた使命は北海道大学大学院医学研究科腎泌尿器外科学分野を発展させることだと思います。
このためには、私を含め腎泌尿器外科学分野のメンバー(同門の先生も含めて)が一つの共同体の中で生きているという認識が重要だと思います。この共同体で生きるためには定まった目標(使命)のもとに、各人が自分なりの力・方法でこの共同体に貢献する必要があります。
私は我々の使命は 「研究、教育、診療を通して世界最高水準の泌尿器科医療を提供するとともに、地域の実態に合った地域医療にも貢献する。」 だと考えています。
腎泌尿器外科学分野の先生にはそれぞれ自分なりのタスク(やるべき仕事)を考えてください。私自身は以下のタスクをたてています。

研究について
「病気の発生や進展のメカニズムの解明、新たな診断法・治療法の開発など、オリジナリティが高く実用化につながる研究を推進する。」
教育について
  • *医学部教育:
    自ら考え、問題意識に基づき自分から学習する医学生」を育てる。
    「2023年問題」に適応した医学教育の実践に貢献する。
  • *大学院教育:
    多くの若手医師に対し大学院教育の重要性を提示し、大学院教育の機会を提供する。
診療について
世界最高レベルの泌尿器科手術の実践とともに集学的治療の確立により、高度医療体制を確立する。
人材育成について
若手医師・女性医師を責任もって育て、泌尿器科医療の発展に大きく寄与する人材を多数輩出する。
そして次世代への橋渡しをする。

これから皆さんにも自分なりのタスクをたてていただき、それを達成することで北海道大学大学院医学研究科腎泌尿器外科の使命を果たし、さらに発展するように皆で協力していきましょう。

2014年10月 篠原信雄

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