尿道下裂

病態

陰茎腹側面の発達に異常があり、亀頭部先端よりも近位側に外尿道口が開口している先天的な疾患で、特に勃起時に陰茎が下側に向くことが多いです。
尿道下裂の原因は、尿道の発達が途中で止まってしまい陰茎の腹側(下側)で尿道がうまく形成されなかったことが原因であり、内因的要因として胎児の精巣が作り出す男性ホルモンの異常、外因的要因として母体が妊娠中に受けた内分泌的環境の変化が関与していると考えられています。
発生頻度は、男子出生の300人-1000人に1人の割合と報告されていますが、近年環境ホルモンの影響などで増加傾向にあるようです。
尿道下裂は、外尿道口の位置で、亀頭部、冠状溝、陰茎振子部、陰茎陰嚢部、陰嚢部、会陰部に細分化されます。しかし、実際には外尿道口近位の尿道はしばしば形成不全で上皮のみで形成されていることや、陰茎の屈曲を解除した際に事実上の外尿道口はさらに近位に後退していることから、索切除後の外尿道口の位置により、遠位型と近位型の2つに分類することが行われています。
合併異常としては、停留精巣などの陰嚢内容の異常、鼠径ヘルニア、矮小陰茎、前立腺小室、心臓奇形などがあります。また、鎖肛、脊髄髄膜瘤、低体重出生児などに尿道下裂の合併が高率であるとされます。

症状

尿道下裂では、以下のような機能的症状、美容的症状を呈します。

Ⅰ.機能的症状

  1. 尿線が下方に向くために、立って排尿をすることが困難です。
  2. 陰茎が勃起すると下に向かって曲がるために、性交渉に支障をきたします。

Ⅱ.美容的症状

  1. 尿道口が亀頭の先端ではなく、より根元側にあります。
  2. 亀頭が左右に分かれた形をしています。
  3. 陰茎を包む包皮が陰茎の背側にあり、亀頭全体を包んでいません。
  4. 陰茎自体の大きさが、陰茎と皮下組織との癒着により、小さく見えます。
  5. 高度な尿道下裂では、陰嚢が左右に分かれたままの状態(二分陰嚢)であったり、陰茎が陰嚢の中に埋もれた状態(陰茎前位陰嚢)となります。

治療&ケア

尿道下裂の治療は、手術です。手術の目的は、尿道下裂に特徴的な美容的症状とともに、排尿や性生活が支障なく行えるように機能的症状を解決します。さらに、将来生じる可能性のある心理的影響を回避することにあります。手術は、1歳前後から行われるのが一般的です。手術の工程は、

  1. 陰茎の屈曲の矯正
  2. 尿道の延長
  3. 尿道口の形成
  4. 亀頭の形成
  5. 陰茎包皮の形成

の順序です。手術方法は、200種類以上の種類があるとされますが、大きく分けて、1度の手術ですべてを行う1期的方法と、前もって陰茎の屈曲を矯正した後に残りの形成術を行う2期的方法に分けられます。
尿道下裂の手術は、非常に繊細なため、難しく熟練した尿道下裂を専門とした小児泌尿器科医によって行われる必要があります。術後は、形成した尿道に細径のカテーテルが1-2週間挿入されるため、カテーテルの屈曲や自然抜去などカテーテル管理や尿・便の処理に注意を要します。我々の施設では、オムツを使用している患児の場合カテーテルを出す穴が開いたオムツを内側にはかせて二重にオムツをする方法をとっています。

術後合併症は、高度な尿道下裂では少なくはなく、

  1. 形成した尿道の途中に穴があく
  2. 亀頭の形がもとのように分かれた形に戻る
  3. 形成した尿道がせまくなる

などの問題が起こりえます。
再手術が必要な場合は、陰茎の皮膚が回復するまで(通常、半年ほど)待つ必要があります。
思春期以降の長期にわたる経過では、陰茎が短い、尿の切れが悪いなどの訴えがみられることがありますが、排尿、性交渉は尿道下裂でない男性と同様に行うことができます。1,2尿道下裂はその性質上、患児の男性としての自覚、精神発達に大きな影響を与えるため、手術が成功した後も成人に達するまでの長期にわたる経過観察が重要であると考えられます。