膀胱尿管逆流症

病態

 腎臓で造られた尿は、尿管を通って膀胱に向かって流れ、膀胱にためられますが、本来は尿が膀胱から尿管や腎臓の方向に流れる(逆流する)ことがないようになっていま す。これは、尿管と膀胱の接合部(尿管膀胱接合部)が尿の逆流をきたさないような構造をしているからです。尿管膀胱接合部に異常があるために膀胱にたまった尿が、再び尿管、腎臓に逆戻りする現象を膀胱尿管逆流症と言います。膀胱尿管逆流があることの問題点は、

  1. 有熱性尿路感染症を起こしやすい
  2. 有熱性尿路感染症を繰り返すと逆流性腎症という腎機能障害が生じる可能性がある
  3. 両側の腎臓に逆流性腎症が生じると、腎不全、成長障害、高血圧などの合併症が生じる
    が挙げられます。

膀胱尿管逆流症は、尿管と膀胱の接合部が生まれつき弱く、逆流を防止する機構が働かない’原発性’と膀胱や尿道の異常によって二次的に尿管膀胱接合部が弱くなっている’続発性’に分けられます。
発症頻度は、1歳以下が最も多く、乳児期の下部尿路機能の未熟性も関与しているとの報告もあります。精査は、1歳以下では、男児が圧倒的に多いものの、学童期以降では女児の方が増えてきます。
小児の膀胱尿管逆流症では、自然治癒が期待できます。特にグレードの低いものでは、ほとんどの症例で年齢とともに、膀胱尿管逆流症は消失することが知られています。

膀胱尿管逆流症における代表的な検査には、以下のものがあります。

1.排尿時膀胱尿道造影

尿道からカテーテルを挿入し、造影剤をゆっくり注入することで膀胱尿管逆流の有無、膀胱、尿道の形態異常を観察します。

2.腎シンチグラフィー

腎皮質の障害の程度を観察するために、99mTc-demercaptosuccininc acid (DMSA)シンチグラフィーが行われます。急性炎症の影響をなくすために、急性腎盂腎炎後3ヶ月以上経過した段階で施行されます。

3.その他の検査

下部尿路機能異常を調べるための尿流動態検査や尿道や膀胱内の器質的な異常を見るための膀胱尿道鏡検査が行われることがあります。

症状

有熱性尿路感染症を契機に発見される例が多いです。急性腎盂腎炎に罹患した小児の20-70%に膀胱尿管逆流が発見されると言われています。特に乳幼児期では、その頻度は高くなります。最近では、エコーの発達により、出生前診断や新生児検診で水腎 症のその異常を指摘され発見される無症候性の膀胱尿管逆流も増加しています。3歳児以降では、尿路感染についで、排尿異常(昼間尿失禁、夜尿症、頻尿など)を主訴に膀胱尿管逆流が発見されます。さらに、学童期以降では、尿蛋白や膿尿、細菌尿で発見される例もあります。

治療&ケア

 膀胱尿管逆流症の治療の目的は、尿路感染症を予防し、腎機能障害を起こさないようにすることにあります。治療には、尿路感染症を予防しながら自然消失を待つ保存的治療と逆流を防止する外科的治療があります。小児の場合、 自然治癒する可能性が十分にあるため、基本的に保存的治療でみていき、尿路感染症が保存的治療でコントロールがつかない場合、外科的治療を行必要があります。

1.保存的治療

尿路感染症の再発を予防するために、抗生物質の少量投与(治療量の3-10分の1程度)が行われます。また、排尿管理(頻回排尿、排尿問診表)や排便管理(便秘の予防)も尿路感染症の予防に非常に重要です。
経過観察期間は、尿路感染の再発に対して注意が必要なため、検尿、尿培養をチェックする必要があります。また、排尿時 膀胱尿道造影で膀胱尿管逆流症の程度の変化やDMSAシンチグラフィーでの腎機能障害の有無についても定期的に調べることが重要です。

2.外科的治療

逆流そのものをとめる方法が取られています。現在の日本では、一般的には下腹部の小切開による方法や内視鏡による方法があります。