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腎臓病と腎移植後感染症

腎不全の原疾患とは?

糸球体の疾患

  • 微小糸球体病変
  • 巣状糸球体硬化症(FSGS)
  • 膜性腎症
  • 膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)
  • メサンギウム増殖性糸球体腎炎
  • 管内増殖性糸球体腎炎
  • 半月隊形成性糸球体腎炎
  • IgA腎症

二次性糸球体疾患

  • 紫斑病性腎症(IgA沈着)
  • ループス腎炎
  • 糖尿病性腎症
  • アミロイド腎

尿細管/間質の疾患

  • 急性/慢性間質性腎炎
  • 尿細管間質性腎炎(TIN)
  • 急性尿細管壊死

血管系の疾患

  • 良性/悪性腎硬化症
  • 血栓性微小血管症(TMA)
  • 顕微鏡的多発血管炎(HUS)

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本邦の腎代償療法

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移植前の医療連携(腎臓内科と移植外科)

数多くの腎臓病患者の治療の最前線
腎不全を食い止める治療

Stage Vに陥る患者数:10年間で10万人

→ 年間1万人の新規腎不全
→ 年間1200件の腎移植数(12%)

  • 移植適応となる世代の患者
  • 合併症などを検討され適応となる患者
  • 生体ドナーが居る方
  • 長期間の待機後に少ない献腎が適合する方

→移植のオプション提示、原疾患の情報

腎移植前・腎不全原因疾患の重要性

最近の腎移植100症例の原疾患(-2013)

生検が行われていない腎不全(CGN) 28
IgA腎症、紫斑病性腎炎 18
低形成腎、尿路疾患、閉塞性腎症uropathy 12
糖尿病性腎症(1型) 9
糖尿病性腎症(2型) 8
遺伝性多発性のう胞腎 ADPKD 8
SLE、自己免疫疾患、アミロイドーシス 4
巣状糸球体硬化症 3
ネフロンろう nephronopthosis 2
その他

(アルポート症候群、間質性腎炎、腎硬化症、ファブリー病、HUS、BOR、結節性硬化症、腎結核、尿路癌)

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腎移植手術の実際

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腹腔鏡を始めとする低侵襲ドナー手術

  • 手術方法は安定してきている。
  • 合併症を少なく – 生活への復帰が早くなる
  • スタンダードな手術へ
    Single site techniques – LESS 単孔式手術 – Gill, Del Pizzo, Desai
  • Transvaginal extraction – Alcaraz, Kaouk スペインの経膣摘出法
  • Contemporary emphasis on safety
    とにかく安全第一

生体腎ドナーの特徴

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日本の腎移植では夫婦か血族、姻族に限定される80%以上のドナーで左腎摘出が行われる。

ドナーに不利益が無いように、を最優先で摘出が行われる。

右腎は静脈が短く切断に余裕がない腎結石は残らないように
血管の本数
左右の腎機能比率は?

灌流→レシピエント側へ

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血液型不適合腎移植

日本で特に多い血液型不適合腎移植(献腎移植が少なく、ドナーの取り替えも行わない)
従来は脾臓摘出を伴う大掛かりな移植
脾臓を取ると肺炎に弱くなったり血栓の心配がある

2005年から、脾臓摘出をしない移植を開始(リンパ腫の治療薬を使ってBリンパ球を抑制)
それでも、血液型反応が強い人は難しい。
韓国などではドナーを取り替えて適合にして移植。
リツキサンの費用と適応外使用の問題がある。

移植後2週間目までは抗体関連拒絶反応の危険があるが、それ以降はその危険性は低下する

→accomodation

従って、移植後2週間以降の成績は、血液型適合の場合と同様になる。

抗体産生抑制 2-4週間前からの免疫抑制
Rituximabの使用
抗体除去 血漿交換
大量ガンマグロブリン療法

移植後の合併症 感染症

免疫抑制剤服用中のため、移植後3カ月以内に発症するサイトメガロウイルス(CMV)感染症の発症頻度が最も高い。治療の遅れが致命的となるため、早期の確定診断や抗ウイルス剤の投与が必要である。

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河原崎秀雄他 編:「生体肝移植マニュアル」,中外医学社,p117,1993(一部改変)
富野康日己他 編:「腎不全治療マニュアル」,南江堂,p187,2004(参考)

移植後に注意を払うべき合併症に感染症があります。

移植後は免疫抑制剤の服用が必須となるため、いわゆる日和見感染症(Opportunistic infection)を発症する確率が高まります。

移植後3カ月以内に発症するサイトメガロウイルス(CMV)感染症の発症頻度が最も高く、治療の遅れが致命的となるため、早期の確定診断と抗ウイルス剤の投与が必要です。

BKウイルス感染症

  • BKポリオーマウイルスは、小児期に初感染
  • 腎尿路系に好んで潜伏感染
  • 強力な免疫抑制療法などで再活性化されたBKウイルスによる尿細管間質病変が移植腎障害の原因となる

→BKV腎症

→尿細胞診(尿路上皮癌のスクリーニング検査)で検出
血漿PCRなどでBKV-DNAの増幅程度を検出する。

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Human Herpes Virus 感染症

HHV-1 HSV-1 単純ヘルペスウイルス1型
HHV-2 HSV-2 単純ヘルペスウイルス2型
HHV-3 VZV 水痘帯状疱疹ウイルス
HHV-4 EBV Epstein-Barr Virus
HHV-5 CMV サイトメガロウイルス
HHV-6 Roseolovirus 突発性発疹
HHV-7 Roseolovirus 突発性発疹
HHV-8 KSHV Kaposi’s sarcoma

同じ科だけに治療薬も共通?

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CMV サイトメガロウイルス 感染症

腎移植後、最も感染機会の多いウイルス感染症(HHV-5)

感染症:ウイルス血症、網膜炎、肺炎、肝炎、胃腸炎など。

ドナーが抗体陽性、レシピエントが陰性(D+R-)の場合、治療薬による予防を3ヶ月以上行うべきである。

抗T細胞抗体治療→高率に発症。6週間の予防投与

CMV pp65抗原検査を定期検査として行うべきである。

内服薬の治療もあるが、小児や重症例では点滴で治療

感染がひどい時には免疫抑制剤を減量する。

しかし、CMV感染単独でも拒絶反応リスクが高くなるので、CMV感染後は免疫抑制剤をしっかり戻す事も重要。

EBV Epstein-Barr Virus 感染症

長期間ケアが必要な、癌ウイルス感染症(HHV-4)

感染症:咽喉頭炎、PTLD、リンパ節炎

(D+R-)の場合、PTLDの危険性が高くなるため、定期検査でEBV-DNAの核酸増幅検査を行う。
その検査で陽性の場合は、免疫抑制剤を減量する。

PTLD (移植後リンパ組織増殖症)のカテゴリー

  1. 早期病変: 反応性形質細胞過形成、伝染性単核球症
  2. リンパ節炎(多形性): リンパ節が腫れる
  3. リンパ節炎(単形性): B細胞性、T細胞性、骨髄腫、バーキットリンパ腫
  4. リンパ腫: ホジキン病、悪性リンパ腫様病変、形質細胞腫

HSV-1,2, VZV Herpes virus 感染症

Human Herpes Virus (HHV) 1,2 単純ヘルペスウイルス

HHV-3 : Varicella Zoster virus 水痘帯状疱疹ウイルス

口唇、陰部ヘルペス、水痘、帯状疱疹
一般的には皮膚がメインだが、重症化では内臓も。
移植後感染では重症化、全身感染のリスクあり、積極的に治療する。
移植前に抗体が無い場合: 播種性、侵襲性VZV
→重症化するため、免疫抑制剤の減量を同時に行う。

肝炎ウイルスとHIV

インターフェロン治療:拒絶反応誘発のリスクあり。

治療意義がその危険性を上回る場合にのみ行う。

原則としてHBV、HCV感染患者には導入免疫抑制は可能である。

HCV、HBVによる腎症の合併を考え、蛋白尿に注意する。

肝炎ウイルス陽性者には、肝硬変、肝癌の危険性を考慮し、定期的な検査を行う。

HBVの治療薬には、インターフェロンの他に核酸合成阻害剤が5種類開発されており、移植後の内服が可能である。

HIVは必ず検査を行う必要があり、専門的治療を対応する。

HIV陽性の場合、治療薬と免疫抑制剤の相互関係が問題となる。

ワクチン接種について

レシピエントには生ワクチンは避けるべきである。

移植後6ヶ月間は不活化ワクチンを含め、避ける。(インフルエンザワクチンのみ例外で、1ヶ月後から可)

→つまり、生ワクチンについては移植までに投与を完了しておきたい。

→レシピエントを含む免疫不全者では、生ワクチンの有害性>有益性。

年齢、暴露状態、居住地、旅行、個人的条件で投与を検討すべきもの:

狂犬病、ダニ髄膜脳炎、日本脳炎、髄膜炎菌、肺炎球菌、チフス菌(特に、脾摘出後の場合は肺炎球菌によるリスクが上がるので要対応)

免疫抑制剤の影響で抗体形成率は多少下がるが、ワクチンの効果や有益性は揺るがない。

移植後禁忌(生ワクチン) 移植後推奨ワクチン
  • 水痘帯状疱疹(VZV)
  • BCG
  • 痘瘡
  • 腸チフス経口
  • 麻疹
  • Mumpus
  • 風疹
  • ポリオ(経口)
  • 日本脳炎B型
  • 黄熱病
  • ジフテリア
  • 百日咳
  • 破傷風
  • インフルエンザ菌B型
  • A型肝炎、B型肝炎
  • 肺炎球菌
  • 不活化ポリオ
  • 髄膜炎菌
  • チフス菌

腎移植後の合併症対策

移植後糖尿病のpredictor

  • Tacrolimusの使用
  • ステロイドの使用
  • 肥満
    肥満の定義
    BMI < 18.5 Underweight
    18.5 – 24.9 Normal
    25.0 – 29.9 Overweight
    30.0 – 34.9 Obesity class 1
    35.0 – 39.9 Obesity class 2
    40.0 < BMI Extreme obecity
  • African American(人種)
  • 高齢
  • C型肝炎

癌治療歴と移植の待機期間

移植を受けるレシピエントの癌治療歴:移植後再発は?

低リスク群 中間リスク群 高リスク群
<2年以内で良いもの 2年 2年〜5年が必要

偶然発見された腎細胞癌
In situ carcinoma
小径、単発、高分化癌

表在性膀胱癌
基底細胞癌(皮膚)

その他両群に属さないもの メラノーマ
乳癌
大腸癌・直腸癌
浸潤性子宮癌
リンパ腫
前立腺癌
5cm以上または有症状の腎癌

移植後の発癌について

移植患者に
特有ではない癌
(一般的な癌)
移植患者に特有な癌 稀な癌
危険率>5倍 カポジ肉腫(HIV陽性) 膣癌、陰茎癌
リンパ腫
腎癌
皮膚癌(メラノーマ以外)
甲状腺
網膜
危険率:1-5倍 肺癌
大腸癌
子宮癌
胃癌
肝癌
咽頭癌
食道癌
膀胱癌
白血病
メラノーマ
喉頭癌
多発性骨髄腫
肛門癌
Hodgkin’s
危険率の
上昇なし
乳癌
前立腺癌
直腸癌
卵巣癌、精巣腫瘍
子宮癌
膵癌
脳腫瘍

ドナーからの悪性腫瘍移行の問題

  • 2010.11月に、英国内で腎移植を受けた男性が、移植後にドナー由来の悪性リンパ腫を罹患
  • 59才(HD歴5年)、移植手術自体は問題なかったが、6日後に献腎ドナーのautopsyにて悪性リンパ腫発覚
  • 直ちに移植腎生検にて腎に悪性リンパ腫あり、化学療法を施行中。(生体ドナーの可能性もあったのに・・・)
  • 女性ドナーからの移植で子宮癌の転移が起こった例も。

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日本の特殊状況

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2008年 世界61カ国における人口百万人当たり死体ドナー数