排尿機能障害/骨盤臓器脱

腹圧性尿失禁 / 男性の腹圧性尿失禁

更新日:2023/2/28

腹圧性尿失禁

どんな病気?

重い荷物を持ち上げた時、走ったりジャンプをした時、咳やくしゃみをした時など、お腹に力が入った時に尿が漏れてしまうのが腹圧性尿失禁です。女性の尿失禁の中で最も多く、週1回以上経験している女性は500万人以上といわれています。女性尿失禁の約半数(49%)が腹圧性尿失禁といわれています。

どんな症状?

腹圧がかかる時に尿が漏れてしまいます。具体的には、

  • 咳、くしゃみをする、笑う
  • スポーツをする
  • 重いものを持ち上げる
  • 坂道や階段を昇り降りする

上記で当てはまる症状があれば腹圧性尿失禁の可能性があります。

原因は?

骨盤底筋群という膀胱と尿道を支えている骨盤底の筋肉が緩むために、尿道をうまく締められなくなり失禁を起こします。骨盤底筋群の働きが弱くなる原因は、加齢や出産、肥満、過重労働や排便時の強いいきみなどが考えられています。

<診断・検査>

以下の検査を組み合わせて診断します。症状によって検査内容は変わりますが、必ずしも全ての検査を行うわけではありません。身体に負担の少ないものから行っていきます。

  1. 問診
  2. 排尿日誌
    排尿回数、排尿量を2-3日間記録していただきます。排尿状態の把握に必要です。
  3. 検尿
    感染尿や血尿の有無を調べます。
  4. 超音波検査
    腎臓や膀胱の形態を調べます。
  5. パッドテスト
    水分摂取後に、60分間決められた動作や運動を行います。検査前後のパッド重量を計測し、尿失禁の重症度を判定します。
  6. 尿流動態検査
    膀胱にカテーテルを挿入して生理食塩水を注入しながら、膀胱の知覚や排尿機能を調べる検査です。同時に尿道の圧を測定する場合もあります。
  7. 膀胱内視鏡検査
    膀胱や尿道の中を内視鏡で観察する検査です。

<治療>

~保存的治療~

軽度の場合は、まず保存的治療で効果が期待できます。
代表的な治療方法は「骨盤底筋体操」です。弱った骨盤底筋を鍛えることで失禁の改善を図ります。また肥満の方では減量が効果的です。

~手術療法~

保存的治療で改善が見られない場合、手術の適応となります。
代表的な手術として、ポリプロピレンメッシュのテープを尿道の下に通して尿道を支える「TVT手術」や「TOT手術」があります。切開する部位も1cm程度と小さく、手術時間も30分から1時間程度と短いため身体への負担が少ないのが特徴です。また長期成績も優れています。術後は排尿状態を確認して数日で退院可能です。当科でも積極的に行っています。

腹圧性尿失禁かも、と思ったら・・・

尿失禁は日常生活の質を大きく低下させてしまう病気です。適切な治療によって症状が大きく改善する可能性があります。まずはかかりつけ医、もしくはお近くの泌尿器科にご相談ください。その後必要であれば当科に紹介いただくことも可能です。一緒に失禁の悩みを解決していきましょう。

男性の腹圧性尿失禁

どんな病気?

前立腺癌に対する前立腺全摘術後の尿漏れは数ヶ月から半年程度で改善することがほとんどですが、数%の患者さんはその後も尿漏れが続くと言われています。原因は、手術による尿道括約筋の障害と考えられています。また、神経因性膀胱による尿道機能障害でも持続する失禁をきたすことがあります。

どんな症状?

寝ている時は漏れない、もしくは少ないですが、起きて活動し始めると漏れが増えてきます。歩行するだけで漏れてしまう、または軽い腹圧でも漏れてしまうため、パッドやオムツが手放せません。遠出ができない、スポーツを楽しめない、人と会うことも億劫になるなど日常生活に重大な支障をきたします。

原因は?

主に下記により尿道括約筋の働きが低下するため、ストッパーが効かずに尿が漏れてしまいます。

  • 前立腺全摘術後
  • 前立腺肥大症に対する経尿道的手術後
  • 神経因性膀胱

<診断・検査>

以下の検査を組み合わせて診断します。症状によって検査内容は変わりますが、必ずしも全ての検査を行うわけではありません。身体に負担の少ないものから行っていきます。

  1. 問診
  2. 排尿日誌
    排尿回数、排尿量を2-3日間記録していただきます。排尿状態の把握に必要です。
  3. 検尿
    感染尿や血尿の有無を調べます。
  4. 超音波検査
    腎臓や膀胱の形態を調べます。
  5. パッドテスト
    水分摂取後に、60分間決められた動作や運動を行います。検査前後のパッド重量を計測し、尿失禁の重症度を判定します。
  6. 尿流動体検査
    膀胱にカテーテルを挿入して生理食塩水を注入しながら、膀胱の知覚や排尿機能を調べる検査です。同時に尿道の圧を測定する場合もあります。
  7. 膀胱内視鏡検査
    膀胱や尿道の中を内視鏡で観察する検査です。括約筋の閉まり具合をみます。

<治療>

軽症の場合、骨盤底筋体操が有効な場合があります。
難治性の場合、人工尿道括約筋植え込み術が有効です。

人工尿道括約筋について

1970年代に米国で開発され、世界的に長い実績がある治療法です。
日本では2012年に保険適用となっており、高額療法費制度も利用できます。
当院では保険適用前から先進医療の指定を受けて人工尿道活筋の植え込みを行ってきた実績があり、国内でも有数の手術実施施設です。

人工尿道括約筋はシリコン製で3つのパーツに分かれています。
全て体内に埋め込むため、外からは見えません。

カフ:尿道に巻き付けます。通常カフは圧媒液(生理食塩水)で膨らんでおり、尿道を圧迫して締めることで失禁を防止します。
圧力調整バルーン:圧媒液(生理食塩水)が排尿時にカフから一時的にバルーンに移動し、その後徐々にカフに戻ります。下腹部に埋め込みます。
コントロールポンプ:陰嚢内に留置し、人工尿道括約筋を動かすスイッチとなります。
排尿時にここを押します。

手術は全身麻酔で1時間半〜2時間程度で終了します。
術後は数日経過をみて退院となります。
人工尿道括約筋が尿道になじむのを待ち、6週間後に作動させます。
作動開始は使い方の指導も兼ねて、通常1泊2日の入院で行います。

人工尿道括約筋の説明図

ボストンサイエンティフィック社HPより抜粋

下記リンクから患者さん向けのHPに移動します。
ぜひ参考にしてみてください。
ボストンサイエンティフィック社HP

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