排尿機能障害/骨盤臓器脱

神経因性下部尿路機能障害

更新日:2023/2/28

神経因性下部尿路機能障害とは

どんな病気?

排尿に関わる神経に原因があり、尿を正常にためること、出すことができない障害です。膀胱と尿道の機能異常が起こります。この異常を放置すると腎臓の働きにまで影響を及ぼすことがあります。

どんな症状?

蓄尿症状:膀胱に適切に尿を溜められない症状です。少量しか溜められない場合頻尿になり、失禁を伴います。逆に尿意が遠く、多量に膀胱に溜まっても気づかない病態もあります。
排尿症状:尿を適切に排出できない症状です。尿の勢いが弱く、少量ずつしか出ないなどの症状です。全く排尿できない方もいます。
尿路感染症:膀胱の内圧が高く膀胱の尿が腎臓に逆流しやすくなっていると、尿路感染症を起こしやすくなります。
腎機能障害:尿路感染症を繰り返すと徐々に腎臓の機能が悪化し、腎不全に至る危険性が高まります。

原因は?

蓄尿、排尿は脳や脊髄といった神経系がコントロールしています。神経の異常をきたす疾患であれば神経因性膀胱を引き起こす可能性があります。脳の代表的な疾患としては、脳梗塞などの脳血管障害、認知症、パーキンソン病などです。脊髄疾患の代表例は二分脊椎症や脊髄腫瘍、外傷性脊髄損傷、椎間板ヘルニアなどです。末梢神経の障害は、糖尿病による神経障害、直腸癌や子宮癌などの骨盤内腫瘍術後などで起こります。

<診断・検査>

以下の検査を組み合わせて診断します。症状によって検査内容は変わりますが、必ずしも全ての検査を行うわけではありません。身体に負担の少ないものから行っていきます。

  1. 問診
  2. 排尿日誌
    排尿回数、排尿量を2-3日間記録していただきます。排尿状態の把握に必要です。
  3. 検尿
    感染尿や血尿の有無を調べます。
  4. 超音波検査
    腎臓や膀胱の形態を調べます。
  5. 尿流量測定+残尿測定
    排尿量と尿の勢いを調べます。専用のトイレでいつも通り排尿するだけです。
    排尿後には超音波を用いて残尿量を調べます。
  6. 尿流動態検査
    膀胱にカテーテルを挿入して生理食塩水を注入しながら、膀胱の知覚や排尿機能を調べる検査です。同時に尿道の圧を測定する場合もあります。
  7. 膀胱内視鏡検査
    膀胱や尿道の中を内視鏡で観察する検査です。
  8. 採血
    腎機能など基本的な項目を調べます。

<治療>

病態に応じて治療法を決定しています。神経因性膀胱を治療する上で大事なことは、日常生活の質を保つことと、腎機能を守ることの2つです。
膀胱容量が小さく尿が近い、漏れるなどの症状には抗コリン薬やβ3作動薬などの薬物治療が中心となります。薬物に治療抵抗性の場合、ボツリヌス毒素膀胱内注入療法を行います。
尿がうまく排出できない排尿障害に対しては、尿道を開く作用のあるα遮断薬を投与しますが、それでも改善を認めない場合や最初から排尿できない場合は間欠自己導尿(自身または介護者による定期的な導尿)や留置カテーテル(尿道または膀胱瘻カテーテル)を考慮することになります。
導尿の方法などは外来できちんと指導しますので、ご安心ください。

神経因性膀胱かも、と思ったら・・・

神経因性膀胱は、日常生活の質の低下にとどまらず、腎機能障害を起こしうる複雑な病気です。この病気を疑ったらまずはかかりつけ医、もしくはお近くの泌尿器科にご相談ください。その後必要であれば当科に紹介いただくことも可能です。特に脳や脊髄の病気を抱えていらっしゃる方で排尿症状がある方は神経因性膀胱の可能性がありますのでお早めにご相談ください。

神経因性膀胱診療における北大病院泌尿器科の特色

  • 二分脊椎症患者さんを多く診ており、道内各地より紹介されてきています。
  • ボツリヌス毒素膀胱内注入療法は2020年の保険適用開始当時から積極的に行っており、
    全国でも有数の施行症例数です。
  • 腸管利用膀胱拡大術など、最終的な外科治療まで行っています。
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