小児泌尿器科疾患

尿道下裂

更新日:2023/3/22

尿道が陰茎の先端(亀頭)まで形成されず、陰茎腹側(本人から見ると陰茎の裏側)におしっこの出口(尿道口)がある状態を尿道下裂と言います。成長に伴う自然軽快はないため、治療は手術となります。尿道口の位置および、陰茎の曲がり度合いにより1期的もしくは2期的に手術を行います。

尿道下裂とは

生まれつき尿道が陰茎の先端(亀頭)まで形成されず、陰茎腹側(本人から見ると陰茎の裏側)におしっこの出口(外尿道口)がある状態を尿道下裂と言います。子供では通常亀頭は包皮に覆われていますが、典型的な尿道下裂では、包皮は陰茎の背側(尿道の反対側)にフードのようにかたよっていて亀頭は見えた状態となります。また陰茎は腹側に屈曲する傾向があり、勃起時に明らかとなります。
尿道下裂の原因はまだ明らかではありませんが、胎児の精巣が作り出す男性ホルモンの異常、母体が妊娠中に受けた内分泌的環境の変化が関係していると考えられています。出生男児の300-1000人に1人との報告がありますが、近年、環境ホルモンの影響などで増加傾向にあるようです。また、体重2500g未満で生まれた低出生体重児に多いことが分かっています。合併する異常としては、停留精巣、鼡径ヘルニア、マイクロペニス、前立腺小室、心臓奇形などがあり、鎖肛や脊髄髄膜瘤にも尿道下裂の合併が高率であると言われています。
尿道下裂では、外尿道口が亀頭の先端にないため、尿線が下向きになり、立っておしっこをすることが難しいことがあります。また勃起した時も下向きに曲がるため、屈曲が強い場合には将来的に性交渉に支障を来します。尿道が陰嚢近くまでしか形成されていない高度な尿道下裂では、陰嚢が左右に分かれた状態であったり、陰茎が陰嚢の中に埋もれた状態となります。

治療とケア

治療

成長に伴う自然軽快はないことから、治療は手術となります。手術は、排尿や性交渉が支障なく行えること、特徴的な外観を整えること、将来生じる可能性のある心理的影響を回避することを目的に行います。心理的影響を回避する目的から、手術は1才前後から行われるのが一般的です。非常に繊細で難しい手術のため、熟練した小児泌尿器科医によって行われたとしても、術後合併症は少なくありません。手術方法は200種類以上あると言われています。大きく分けると1度の手術で尿道の形成や陰茎の屈曲などすべてを治す1期的方法と、陰茎の屈曲を矯正した後に尿道形成を行う2期的方法に分けられ、施設や尿道下裂の程度により数種類の方法を使い分けています。術後の合併症としては、作った尿道の途中に穴が開く(尿道皮膚廔)、亀頭が元のように別れた形に戻る(亀頭離開)、作った尿道が狭くなる(尿道狭窄)、陰茎屈曲が再度起こるなどがあります。再手術が必要な場合には陰茎の皮膚が回復するまで通常半年以降期間をあけています。

ケア

思春期以降の長期にわたる経過では、陰茎が短い、尿の切れが悪いなどの訴えがみられることがありますが、手術で作成した尿道は陰茎とともに成長すると言われており、排尿・性交渉は尿道下裂でない男性と同様に行うことが出来ます。また、精巣機能に問題がなければ、子供を得ることも可能です。尿道下裂はその性質上、患児の男性としての自覚、精神発達に大きな影響を与えるため、手術が成功した後も長期にわたる経過観察が重要であると考えています。

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