小児泌尿器科疾患
膀胱尿管逆流
更新日:2023/3/22
尿管と膀胱のつなぎ目に異常があるために膀胱に貯まった尿が、再び尿管や腎臓に逆戻りする現象を膀胱尿管逆流と言います。治療には、尿路感染を予防しながら自然消失を待つ保存的治療と、逆流を治す外科的治療があります。
膀胱尿管逆流とは
腎臓で作られた尿は、尿管を通って膀胱に向かって流れ、膀胱に貯められます。尿管は膀胱の筋肉を貫き、粘膜の下を通って尿管口という出口から尿を膀胱に流します。本来は尿が膀胱から尿管や腎臓の方向に流れる(逆流する)ことがないようになっています。尿管膀胱のつなぎ目に異常があるために膀胱に貯まった尿が、再び尿管や腎臓に逆戻りする現象を膀胱尿管逆流(vesicoureteral reflux: VUR)と言います。尿管と膀胱の接合部が生まれつき弱い原発性と膀胱や尿道の異常によって二次的に尿管膀胱接合部が弱くなっている続発性(二次性)に分けられます。小児のおよそ1%に発生すると推定されますが、正確な頻度は不明です。1才以下では男児に見つかる場合が圧倒的に多いですが、学童期以降では女児の方が増えていきます。尿路感染をきっかけに発見される例が多く、急性腎盂腎炎と診断された小児の20-70%に膀胱尿管逆流が見つかると言われています。最近では、超音波検査の普及により、出生前診断や新生児検診で腎臓の異常を指摘され見つかる膀胱尿管逆流も増えています。3才時以降では、昼間のお漏らしやおしっこの回数が多いなどの症状、学童期以降では検尿の異常で発見される場合もあります。膀胱尿管逆流があると、発熱を伴う尿路感染症を起こしやすいこと、膀胱尿管逆流とともに先天的な腎障害を有している場合があり、尿路感染でさらに悪化する可能性があること、両側に高度な腎障害が生じると、腎不全や成長障害、高血圧などの合併症を来す可能性があることなどの問題点があります。ただ、小児の原発性膀胱尿管逆流では自然消失することが稀ではなく、特に程度の軽いものではほとんどの症例で年齢とともに自然消失が期待されるため、尿路感染を起こさないようにしながら、保存的に経過をみることが一般的です。
関連する検査
膀胱尿管逆流における代表的な検査には以下のものがあります。
1. 排尿時膀胱尿道造影
尿道から細い管を挿入し、膀胱の中に造影剤を貯めていきます。この検査で膀胱尿管逆流の有無・程度、膀胱・尿道の形態異常の有無、おおまかな排尿状態を確認します。外来のレントゲン検査室で行います。
2. 腎シンチグラフィー
腎障害の評価を行うためにDMSA腎シンチグラフィ―という検査を行います。尿路感染の後には急性炎症の影響を除くため、治療後3ヶ月以上経過した時点で行います。乳幼児では入眠処置が必要なため、1泊入院で検査を行っています。
3. その他の検査
血液検査で総合的な腎機能の評価を行ったり、尿検査でタンパク尿の有無を確認します。また、二次性(続発性)の膀胱尿管逆流が疑われる場合には、尿流動態検査(尿が貯まる時、排尿する時の膀胱内の圧力を見る検査です)や膀胱尿道鏡検査(尿道や膀胱を直接カメラで見る検査です。一般的に子供に行う場合は手術室で麻酔をかけて行います)を行う場合もあります。
治療方法
膀胱尿管逆流の治療の目的は、尿路感染を予防し、腎機能障害を起こさないようにすることです。治療には、尿路感染を予防しながら自然消失を待つ保存的治療と、逆流を治す外科的治療があります。小児の膀胱尿管逆流は自然消失が期待されるため、基本的に保存的治療を行い、尿路感染のコントロールがつかない場合に外科的治療を行う流れが一般的です。
1. 保存的治療
尿路感染を予防するため、抗生剤の少量投与(治療量の1/3から1/6程度)が行われます。また、おしっこを貯めすぎない排尿習慣(頻回排尿)や便秘の予防も尿路感染を起こさないようにするため非常に重要です。外来では主に尿検査を行い、定期的に排尿時膀胱尿道造影やDMSAシンチグラフィ―で膀胱尿管逆流の程度の変化や腎機能障害の有無を調べていきます。すでにタンパク尿や腎機能障害を認める場合には、小児科や内科の先生と連携し、食事や降圧剤などの薬物治療を行っていく場合もあります。女性は、妊娠の時期に尿路感染を起こしやすくなるので注意が必要です。
2. 外科的治療
逆流を止めるため、下腹部の小切開や腹腔鏡により膀胱の中からもしくは外から膀胱と尿管のつなぎ目を治す方法や、尿道から内視鏡を入れて、尿管の出口にデフラックス®という充填物質を注入する治療が行われます。排尿や排便の習慣に問題がある場合には、術後の再発が多くなるので、術後も排尿や排便習慣には気を付ける必要があります。
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