小児泌尿器科疾患
夜尿症
病態
夜尿症は、昼間のおしっこの症状がない単一症候性夜尿症と、昼間の尿漏れやトイレが遠いなどの症状を伴う非単一症候性夜尿症に分類されます。夜尿症は一つの原因で起こるわけではなく、寝ている間の尿量が多い・尿のたまる量が少ない・尿意で目が覚めない・神経発達の遅れ・遺伝的要因などが原因として挙げられます。また、腎尿路疾患・神経疾患・内分泌疾患などにより夜尿症をきたす場合もあります。
頻度・疫学
夜尿症の頻度については、5-6歳で約20%、小学校低学年で約10%、10歳を超えても5%前後、中学生で1-3%に見られるとされています。また、まれながら成人になっても夜尿症が持続する人がいることが知られています。夜尿症の改善・消失は男児と比べて女児の方が早いことがわかっています。
疾患としての重要度
夜尿症は、多くの場で年齢とともに消失してきますが、全員ではありません。患者本人や患児の家族が悩んでいる場合には積極的に治療を行うことがすすめられます。
診断
- 夜尿症の診断・検査・治療は何歳になったら始めなければならない、といった決まりはありません。経過とともに自然消失することが多いことから、治療は病態や社会生活上の必要性を相談しながら始めます。
- 初診時には、夜尿症の経過や日中の排尿状態、飲水状況、便秘の有無や他の病気が隠れていないかを確認するためにお話をお聞きます。
- 夜尿症の診断や治療には、夜尿日誌や排尿日誌を記録し、夜尿日数、夜尿量、一晩の夜尿回数、夜間尿量、尿意で目が覚めるか、昼間の尿漏れの頻度や量、一度に排尿する量などを参考にして行います。
治療
- 生活指導:夜尿に関係していると考えられる食事内容、飲み物の種類や飲水量、および排尿習慣(寝る前の排尿など)について指導を行います。
- 行動療法:代表的な治療として夜尿直後にアラーム音で覚醒させる夜尿アラーム療法があります。この治療によって睡眠中の尿保持力が増大することによって機能的膀胱容量が増加し、尿意覚醒せずに朝まで持つようになると考えられています。
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薬物療法:代表的薬剤として抗利尿ホルモン剤(鼻へのスプレーか内服薬)、三環系抗うつ剤、抗コリン薬があります。
- 抗利尿ホルモン剤:腎臓での水の再吸収を促進するため、夜間尿量を減少させます。水中毒が最も重大な合併症であり,夕食時から就寝時までの水分摂取制限が重要です。
- 三環系抗うつ剤:有効性の機序がはっきりしませんが、尿意で目を覚めやすくする、尿をためやすくする、尿を漏れづらくする、尿の量を減らすなどの効果があります。
- 抗コリン剤:膀胱に尿をためやすくする効果があります。
- いろいろな治療を行っても改善しない場合には、尿流動態検査(尿が貯まる時、排尿する時の膀胱内の圧力を見る検査です)などの、泌尿器科的検査を行う場合があります。
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